小説紹介#10【桜夜 ―桜雪の夜、少女は彼女の恋を見る―】作者:白河マナ

小説紹介

今回は白河マナさんの小説を掲載させていただきます!

白河マナさんはアルファポリスで活動されているようですよ!

今回掲載させていただくのは、 白河マナさんの『桜夜 ―桜雪の夜、少女は彼女の恋を見る―』のプロローグと第1話です。

もし興味を持った方はアルファポリスで続きをご覧ください。

『桜夜 ―桜雪の夜、少女は彼女の恋を見る―』概要

桜居宏則は3年前に亡くなった友人の墓参りのためバイクを走らせていた。しかしその途中で崖下の川に転落して濁流に飲み込まれてしまう。どうにか川岸にたどり着いたものの辺りには家もなく、ずぶ濡れの身体に追い打ちをかけるように空からは雪が降りはじめていた。意識が朦朧とする中、ふらふらと彷徨っていると桜の巨木に行きつく。夜、桜の花びらと雪――幻想的な風景の中で宏則は黒髪の女性と出会う――

『桜夜 ―桜雪の夜、少女は彼女の恋を見る―』プロローグ

花びらが舞っていた  

桜色の空  

青年は草むらに寝転んで、空を見上げる  

桜の花びら、  

それと、雪  

冷たく白い結晶が、空から落ちてくる  

春  

なのに、雪が降っていた  

青年は目を閉じる  

身体は動かない  

苦い、血の味がする  

死はゆっくりと近づいてくる  

恐れはない  

ただ、最後に会いたい人がいた  

会って、伝えたい言葉があった  

だがそれは、叶わない願いだと知っていた  

寒い  

血が凍っていく感じがする  

眠い  

雪が青年の姿を隠し始めていた頃  

声が聞こえた  

聞き覚えのない、声  

けれど、とても懐かしい気がした  

灰色の空  

黒髪の──

『桜夜 ―桜雪の夜、少女は彼女の恋を見る―』一話

足音が近づいてくる。

「この時期に雪が降るなんて珍しいねー」

「そうね」  

2種類の声。  

ふたつの女の声。

「どーしたの、お姉ちゃん?」  

……お姉ちゃん。

ということは、姉妹か。  

足音が消えた。  

どうやら立ち止まったらしい。

「……さくら」

「ホントだ。もう桜の季節なんだね」

「でも、雪」

「あはは。なんだかおかしいね」

「私は、雪も桜も好き」

「あたしも好きだけど、寒いのは苦手かな」

「そう?」

「シロちゃんなんて、今日は、ずっと家の中にいるよ」
「シロは寒がりだから」

「うん。ゴーちゃんは、こんなに元気なのにね」

その言葉に同意するかのように、  

ワンワンワンッ!  

……犬か。

「あっ、そんなに引っ張るなーっ」  

グルルルルルゥ……。  

犬の唸り声が、俺の耳元で聞こえる。

「ここになにかあるの?」  

ワンワンッ!  

うるさいから、そんなに騒ぐな……。  

俺は思う。  

だが、声を出す力も残っていない。  

とても眠い。  

そっとしておいて欲しかった。  

暗くて、  

冷たくて、  

どうしようもなく、眠い。  

がりがりがり……。

「ゴーちゃんが、雪を掘り出したよ、お姉ちゃんっ!」

「食べ物でも埋まってるのかしら」  

ひょっとして俺のことか。  

犬畜生に食われるなんて、嫌な最後だな……。  

がりがりがり……。  

がりがり……。  

がり、

「あ、なんか見えてきたよっ!」  

じょ~~~……。

「……ゴーちゃん」

「残念。食べ物じゃなかったわね」  

じょ~~……。  

……ん。  

なんだか、  

じょ~……。  

なんだか、顔が生温かい……。

「き、」

「どうしたの?」

「きゃぁぁぁああああああああああ!!!!!!!!!」

「わ、おっきな声」

「く、首ぃぃっ! 生首ぃぃぃ!!」

「あら本当」

「なにのん気な事言ってるの! これはバラバラ殺人なんだよ!」

「そう? でもこの人、身体もあるけど」

「……あ」

「ほんとだ。じゃあ、普通の殺人事件かな」  

グルルルルルゥ……。

「あ、こら、ゴーちゃんダメだよぉ!」  

ずるずるずる……。  

痛い。  

おもいっきり噛まれてるぞ、俺……。

「めっ!」  

めっ、じゃねぇ……。  

早くこのくそバカ犬をどうにかしてくれ。  

まあ、雪の中からは、脱出できたみたいだけど。

「わかったわ」

「なに、お姉ちゃん?」

「ゴーちゃんは、この人をうちに連れていこうとしてるのよ」  

俺には食い殺そうとしているとしか思えないが。

「え、まだ生きてるの?」

「息してる」

「……あ、ほんとだ」  

グルルルルルゥ……。  

ずるずるずる……。  

すごい力で地面を引きずられている、気がする。

「家まで運んでくれるのかなぁ」  

体の感覚がなくなってきている。  

右肩を強烈に噛みつかれているが痛みはない。

「がんばれ、ゴーちゃん♪」  

犬に任せてないで、お前が頑張れ。

「帰ったらご褒美よ」  

……なんて姉妹だ。  

こいつらは人間じゃない。  

女でも2人がかりで運べば、なんとかなるだろうに。  

いくら見ず知らずの人間でも死にかけてるんだぞ。  

グルルルルルゥ……。  

ずるずるずる……。  

だんだん意識が遠のいていく……。

「あと200メートル♪」  

俺はあと200メートルも引きずられるのか……。

「頑張れ♪ 頑張れ♪」  

誰でもいい、助けてくれ……。  

異世界にでも転移させてくれ……。

「あっ、そう言えば家にソリがあったわね」

「ソリ?」

「あれにこの人を乗せて運べば、私たち2人でも、なんとかなるんじゃないかな」  

助かった……。  

つーか、最初からそうしろ。

「あと150メートルなのに……」  

非常に残念そうな妹。

「でも、肩からすごい血が出てるから」

「……うわ」

「左肩に変更するって手もあるけど」  

頼む、勘弁してくれ。

「……すごい血」

「ね、すごいでしょう」  

……俺の右肩は、どうなってるんだろう。  

体中の感覚は、もう完全に失われていた。  

かなりの間、雪の中にいたから、凍傷にかかってしまっているようだ。

「あたし、ソリ取って来るね」

「転ばないでね」

「うんっ」  

どうやら妹が行ってくれるらしい。  

グルルルルルゥ……。  

ずるずるずる……。

「もういいのよ。ゴーちゃん」  

ワンワンッ!

「……すごい血」  

ぽつりと姉が呟く。  

そんなにすごいのか?

「……大丈夫かしら。この人」  

大丈夫じゃなくさせたのは、誰だと思ってるんだ。  

不満をぶちまけたかったが金縛りにあったように体の自由がきかない。  

目が開かない。  

口も利けない。  

身体を動かすこともできない。  

いまの俺の目に映るのは闇だけ。  

なのに、意識だけは妙にハッキリしていた。  

桜の季節、雪の降る日。  

俺は犬の小◯にまみれながら、  

右肩を食い千切られそうになりながら、  

最後には、悪魔のような姉妹に拉致された。  

ただ、友人の墓参りに来ただけなのに。

2話以降は白河マナさんのアルファポリスでご覧ください!

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