
小説紹介
今回は紅城楽弟さんの小説を掲載させていただきます!
紅城楽弟さんは小説家やカクヨムになろうで活動されているようですよ!
今回掲載させていただくのは、紅城楽弟さんの『EgoiStars:RⅠ』の第1話です。
もし興味を持った方は小説家になろうで続きをご覧ください。
EgoiStars:RⅠ概要
平穏を望む皇子は何故暴君になったのか?帝国最期の50年を描くSF戦記。 紅城楽弟
これは数多の銀河の中にある、とある惑星系の物語――
海陽と呼ばれる恒星を中心に12の惑星が集まる海陽系
その海陽系の7割を統治していた星間連合帝国と
帝国に反旗を翻した統合軍の戦いは帝国皇帝の死によって終結を迎えた。
これにより星間連合帝国は崩壊し3000年以上に渡り繁栄を極めていたガウネリン王朝は幕を下ろした――
――78年後
海陽系屈指の名門大学パネロ大学で助教授を務める歴史学者トーマ・タケダは星間連合帝国が崩壊に至った経緯を究明していた。
この海陽系に繁栄と秩序、そして平穏を齎してきた星間連合帝国は1人の男が歴史舞台に降り立ったことで崩壊の道を辿っていく。
男の名はダンジョウ=クロウ・ガウネリン。
ラストエンペラーと呼ばれる星間連合帝国最期の皇帝である。
皇帝の座に就いて間もなく「軌跡先導法」という法案を皇帝権限で強行可決したダンジョウ政権は、人間の才能を遺伝子レベルで調べるB.I.S検査を基に帝国民一人一人の人生を徹底に管理していった。
帝国民はそれぞれ適した仕事・結婚が振り分けられ、それぞれが円満な家庭を築き、それぞれに適した能力を数多の仕事に発揮する。
この管理された先導によって帝国の繁栄は最盛期を迎えたと言われている。
だが、この自由が奪われた管理体制に反発の声が上がるのにそれほど時間は掛からなかった。
唯一の隣国ローズマリー共和国、フマーオス星の独立宣言、海陽系最大宗教である神栄教による宗教国家の建国、さらの星々で起きていた小さな火種はやがて統合軍という大きな一つの炎へと変貌し星間連合帝国を焼き尽くしていった。
しかし……この歴史的事実を前にトーマ・タケダは1つの疑問を抱いていた。
何故、帝国皇帝は自由と平穏を捨て、軌跡先導法なる法案を生み出したのか?
その真相が隠された皇帝の生涯を辿っていく内に、トーマは知られざる皇帝の素顔を知ることになる。
双子の愚弟として生まれ
多くの人々に慕われる賢帝となり
世界を徹底に管理する暴君へと変貌していった男……
この男の生涯にこそ帝国崩壊の秘密が隠されていた。
巨大な星間連合帝国
女性が主権の握るローズマリー共和国
世界中に数多くの信徒を持つ神栄教
社会の裏で蠢くマフィアや軍需企業
多種多様な人々が様々な感情の中で繰り広げるスペースオペラ 第一部序章。
EgoiStars:RⅠ プロローグ
EgoiStars:RⅠ
海陽連邦暦 78年
プロローグ『兵どもが夢跡』
【海陽連邦自治惑星ラヴァナロス パネロ大学】
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ラヴァナロス最終戦争背景における考察
――結局、あの戦争のきっかけは何だったのか?
かつて、そんな疑問を抱く人々が多く存在したという。
しかし、疑問とは時間という抵抗できない力によって風化していくのが世の常である。
戦争はやってはいけない
という教訓があれば十分であり、忌まわしい過去の汚点など目を背けたくなるものなのだ。
パネロ大学 海陽系歴史学科 助教授 トーマ・タケダ
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「こりゃ……悪くないんじゃないか?」
自分で認めた論文の書き出しを読んでみると、我ながら良い文章に見えたので俺は思わずそう呟く。しかし俺は慌てて頭を振りながらその自惚れを振り払った。言葉を操る事に関しては専門外な俺がそう感じても信憑性が薄い。俺は歴史研究を行う万年助教授であり、文学者でなければ作家でもないのだ。
「文学部の同期に校閲してもらうか……」
俺はそう呟きながら水を一口含むと、背伸びしながら立ち上がる。周囲を見回してみると窓の外は深夜の時分とあって既に暗く、研究室にはもう俺しか残っていなかった。
ストレッチを終えて再び自分のデスクに腰を下ろすと、目の前に浮かび上がる2次元のディスプレイを眺めた。宙に舞うディスプレイには、今まさに俺が考察している時代の年表が映し出されていた。
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帝国暦元年:星間連合帝国建国
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帝国暦3340年:政務冷戦
帝国暦3356年:皇帝崩御
帝国暦3357年:復古宣言
帝国暦3358年:皇宰戦争
帝国暦3359年:ナスカブディア協定締結
帝国暦3360年:皇宰戦争終戦
帝国暦3361年:神栄教民主共和国建国
帝国暦3362年:簒奪禅譲論
帝国暦3363年:天二日
帝国暦3364年:バルトルク研究所爆発事故
帝国暦3365年:帝公分離
帝国暦3368年:ナスカブディア協定終結
帝国暦3372年:帝教戦争
帝国暦3376年:羊海炎上戦争
帝国暦3377年:煉獄隊壊滅事件
帝国暦3379年:教公同盟
帝国暦3380年:デセンブル研究所反人道実験事件
帝国暦3384年:閏年の悲劇
帝国暦3385年:第一次帝教公戦争
帝国暦3386年:皇女騒乱
帝国暦3387年:第二次帝教公戦争
帝国暦3388年:変革反乱運動
帝国暦3389年:アルカイド監獄襲撃事件
帝国暦3389年:皐会談
連邦協定締結
帝国暦3390年:ラヴァナロス最終戦争
海陽連邦暦元年(帝国暦:3390年):海陽連邦設立
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「こうしてみると帝末期って戦争だらけだな」
俺達が暮らす海陽系12惑星のほぼ8割を支配していた独裁国家、星間連合帝国。その帝国の末期を現代では帝末期と呼んでいた。
星間連合帝国の終焉……自由と平等を掲げる三国統合軍に滅ぼされたのが今から78年前。それが天下分け目の最終戦ラヴァナロス最終戦争の結末である。現在、この海陽系を統治するのは海陽連邦政府だ。そしてその前身は帝国を滅ぼした三国の統合軍なのだが、世襲制の帝国時代とは違って民主制度で選ばれた議員らが国政を統括している。
海陽連邦政府が設立されて間もない頃は帝国側に居た人間やラヴァナロス人の参政権は認められなかったという。参政権が認められてからも彼等の風当たりは強く、史上初となるラヴァナロス人の連邦議会議長が誕生したのもつい三年前の話だ。それだけ帝国に対する嫌悪感がこの海陽系で暮らす人間には根付いていた。
現在、ラヴァナロス人差別は消えつつあるが、それでも年長者の中には未だにラヴァナロス人を嫌う者は存在している。俺自身、数年前に付き合っていた恋人の祖父母から交際を反対された事があるくらいだ。そんなラヴァナロス人の俺が戦争を調べるという事に多くの先輩から心配の声があったのを今でも覚えている。
『戦争のことを調べるなら気をつけろ。一昔前までは連邦政府からかなり厳しい監査があったらしいからな。特にラヴァナロス人のお前は歴史改竄なんて濡れ衣を着せられる可能性はゼロじゃあないんだ』
戦争は綺麗事ばかりではない。
勝者である統合軍、現政府にもかなり後ろめたいことがあるのは必然だ。だが、そんな忠告を受けても俺が頑なに戦争の事を調べようとしたのは訳がある。そいつはひとえに母方の祖父の影響だった。
ラヴァナロス人というだけでなく、星間連合帝国の軍人という過去を持っていた俺の爺さんは、戦後肩身の狭い思いをしながら生きていたという。だが、爺さんは決して自らの過去を隠したり恥じる事は無かった。俺がガキの頃には当時の事を誇らしげに話していたものだ。
『儂だって戦争なんぞ好みはせん。だからこそ戦争を引き起こす事になった責任は感じておる。しかしそれでも構わんのだ。儂等には皇帝陛下に多大な恩があった。何より皇帝陛下は格好良くてなぁ! あの孤高に戦う姿を見りゃあ男でも惚れるぞ。何より目には見えない……B.I.S検査なんぞじゃあ分からん魅力が皇帝陛下にはあったもんだ』
耳にタコが出来るほど繰り返し聞かされた爺さんの昔話……こいつこそが俺の好奇心の始発点であり、皇帝の事を調べる原点になったと言えるだろう。
皇帝の人生は生まれた瞬間から壮絶だったという。彼はB.I.S検査という遺伝子レベルで調べ上げる才能検査によって、科学的に裏付けされた明確な凡人としてこの世に生を受けた。さらに母親である皇后は産後にすぐに亡くなってしまい、父親の先帝は老齢で寝たきり状態。おまけに当時は帝国宰相が権力を奮っており、帝国史でも皇族が最も弱体化していた時期だった。
そんな時代の中、皇帝は絶え間ない努力を重ねて多くの英傑を率いる名将となり、やがて帝国を牛耳っていた宰相を打ち破る。そうして皇族の力を復権させた彼は、民意の後押しを受けて兄から皇帝の座を奪い、賢帝として崇められていったのだ。
ここまで聞けば勘のいい人間は俺が戦争に対して抱いた疑問が見えてくるだろう。
――そんな皇帝がなぜ民を縛り付ける暴君になったのか?
ということだ。
皇帝はそれから程なくして、帝国民の完全管理制度法案・軌跡先導法を皇帝権限で強行可決する。その法案の中身は、帝国民それぞれB.I.S検査を義務付け、その結果を基に労働、婚姻、居住惑星を管理し、更には各惑星の混血種、犯罪経歴者、神通力を持つ異端者などの社会的地位を剥奪するといった自由と平等はおろか人権さえも奪うものだった。
しかし、この軌跡先導法によって帝国民の幸福指数は上昇していった。科学技術は発展し、出生率も上昇、離婚率はほぼゼロで、犯罪も激減した。おかげで帝国は建国史上最盛期を迎えたと言っていいだろう。………それでも、人間とは管理されることを嫌い自由を求めるようにできている。やがてこの管理された鳥籠に反旗を翻す者達が現れ、その小さな火種は統合軍という大火となっていった。
つまり、賢帝と呼ばれた男が暴君になったが故にこの最後の戦争は起き、帝国は崩壊していったのだ。もしも皇帝が暴君に変貌する事がなければ、帝国は滅びることなく今もこの星々を治めていたかもしれない。それは即ち、皇帝が暴君になった理由こそがこの戦争の正体でもあると言えた。
だからこそ俺は長年にわたって調べ続けてきたのだ。最後の皇帝……ダンジョウ=クロウ・ガウネリンの生涯を。
EgoiStars:RⅠ 1話
帝国暦 3332年
3332年 『不運の男』
【星間連合帝国 ジュラヴァナ星 マリンフォール大聖堂】
星間連合帝国においてルネモルン家は建国時から名を残す名家として知られている。
建国者である初代皇帝オドレー=マルティウス・ガウネリン女帝を支援したことから端を発し、長い歴史の中でも裏で帝国を支えていたからだ。
現在、ルネモルン家当主のハーレイ=ケンノルガ・ルネモルンは、建国以前より皇族に仕えてきたと言われるナヤブリ家を差し置き次期宰相との呼び声も高い。さらにハーレイの長男キョウガ=ケンレン・ルネモルンは、今年成人を迎える若さでありながら既に父の懐刀として全幅の信頼を得ており、この親子によってルネモルン家は帝国内で確固たる地位を築いていた。
そんな名家の次男に生まれたコウサ=タレーケンシ・ルネモルンは、本家のあるラヴァナロス星から遠く離れたジュラヴァナ星にある神栄教の聖地、大聖堂マリンフォールの中で女神メーアに祈りを捧げていた。
コウサは生後間もなく受けたB.I.S検査において、帝国史上最高の総合値を叩き出した天才児である。しかし、それが生後3カ月の彼に最初の不幸を齎した。乳児の時点で既に大人以上の知能を有していたコウサは、2歳を迎えると既に母の育児を必要とせず、自らの意思を表して母を論破していたのだ。その知能は母親に恐怖心、そして屈辱を与えた。彼の母はルネモルン家に嫁ぐだけあって由緒正しい家柄の令嬢であり、プライドが高かったので尚更かもしれない。
それから程なくして、コウサの母親は家族を捨ててルネモルン家を出て行った。コウサが原因で家族が分解し始めたのだ。
父ハーレイもまた次男のその異常な成長速度と才能を危惧し、やがて不信感を抱くようになる。その感情は無関心へと変貌していき、いつしかコウサは広大なルネモルン家の離れで軟禁されるような生活を送るようになった。
学校にも行かず自らの独学で邸内にある本を読み漁っていたコウサは文字通り1人で成長していった。そして帝国随一の知能を誇るパネロ大学の問題を理解した5歳の春。すでに自分に起きている状況や社会の仕組みを理解していたコウサは、自らの不幸を誇りという2文字で隠しながら生きる術を身に付けていた。彼は自分をB.I.S検査によって裏付けされた選ばれし存在だと信じていたのだ。身近に愛する人のいない彼にとって両親を必要としない自分への言い訳が必要だったのかもしれない。
しかし、コウサの不幸は終わらなかった。彼が5歳を迎えた4か月後……コウサの持つB.I.S歴代最高値が隣国ローズマリー共和国で生まれた少女に塗り替えられてしまったのだ。これによって彼は自分を肯定するものをなくしてしまう。唯一自分にあった光……世界を動かせるほどの力が一気に消えてしまったようだった。
それから3年後、コウサは8歳で神栄教という宗教に入信する。海陽系最大宗教である神栄教の教えは慈愛に満ちた女神メーアの下、すべての人のすべてを肯定するという単純なようで奥深いものだった。そして現在、コウサはこの惑星ジュラヴァナにある聖地、マリンフォール大聖堂に移り住み、神栄教の教えや勉学に武術にと励んでいる。
ある朝――大聖堂の女神メーア像を前に日課の祈りを捧げていたコウサは閉じていた瞼をうっすら開き、彼の横で同じく祈りを捧げるその高貴な姿を見つめた。コウサが唯一心を開き敬愛する人物……マリンフォール大聖堂の長であるセイマグル・ヴァレンタイン法王は彼の隣で同じく祈りを捧げていた。
「コウサ。お祈り中に余所見は感心せんなぁ」
目を閉じたままそう告げるセイマグルに、コウサは驚きながら「ス、スイマセン」と言って祈りに戻る。するとセイマグルはケラケラ笑いながら立ち上がり、コウサの頭を大きな手でガシガシと撫でまわした。
「コッコッコ! 掛かったな。カマかけただけや!」
「ほ、法王様!」
セイマグルは笑いながら立ち上がり、まるで悪戯をして逃げるように走り出す。コウサは撫でてもらった頭を押さえながらセイマグルを追いかけた。
外の庭を歩きながらコウサは恥ずかしそうに、そして無邪気な笑顔を見せていた。子供でありながら天才と呼ばれ、肩ひじを張って生きてきた彼からすればセイマグルと話す時だけは子供らしくいられたのだ。分け隔てなく全ての人々に優しさを振りまくセイマグルは当然のごとく誰からも慕われる。それは法王という役職を抜きに彼の人柄がなせる業だったのだろう。そして親から見捨てられたコウサは人一倍彼を崇拝している。セイマグルもそんな彼の献身ぶりに応えるように誰にも教えていない秘密をコウサに共有してくれていた。
「ねぇ法王様。今日も見てくださいよ」
庭内を歩きながらコウサは無邪気にそう告げるとセイマグルはケラケラ笑った。
「またかいな! もう何回目や?」
「何度でも聞きたいんです!」
コウサの嘆願にセイマグルは優しい笑顔を作りながらも、その中にヤレヤレと言わんばかりのため息をつきながら振り返る。そしてゆっくりと人差し指をコウサの眉間に合わせて目を閉じた。一瞬の静寂の後、セイマグルは身体を震わせると小さく口角を上げながらコウサの頭に手を置いた。
「変わらんなぁ。前と一緒や。コウサはいつか世界を作る。その世界は次の世代にとって必要になる。今のところはそれしか見えへん」
みぞおちまで届く長い白髭を摩りながらセイマグル法王は微笑む。
法王には未来を見通す力があった。それがコウサとセイマグルが共有する彼の秘密である。そんな彼の秘密の力で得た言葉を聞くたび、コウサは自信を持つことができたのだ。セイマグルのこの予見という力は神通力によるものだった。
神通力……それは帝国に伝わる神話において神英教の唯一神である女神メーアを殺す一因となった異端者が持つ力である。
神栄教の法王が神を殺した力の持ち主であると知られれば世界は大いに混乱するだろう。中にはセイマグルの排除を求める者もいるかもしれない。だからこそコウサはこの秘密を決して誰にも告げなかった。彼にとって女神メーアが母ならばセイマグルは父に他ならないのだから。
「つまり……僕は世界を作る……世界にとって有意義な存在になれるんですよね?」
コウサは目を輝かせながらそう尋ねると、セイマグルはいつものように茶目っ気のある優しい笑顔で答えてくれた。
「善か悪かは誰も決めることはでけへん。それを判断するんは未来の人やからな。もしそうなりたいんなら精いっぱい努力して世界とメーア様に感謝せんとな」
コウサは希望に満ちた目で頷く。
自分はいずれ世界を作るのだと信じて――
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